精子DNA断片化指数
とは
近年、男性不妊症の現場においては、「精子の質」を評価する動きが高まっています。最新のWHOラボマニュアル第6版においても、精子の質を評価する項目が追加されております。射出された精子のDNAを調べると、数%〜数十%の割合で断片化された(DNAダメージがある)精子が含まれています。このDNAにダメージを受けた精子の割合を精子DNA断片化指数(sperm DNA fragmentation Index : sperm DFI)と言います。この割合は活性酸素の影響を受けることで高くなるので、加齢や喫煙、精索静脈瘤により上昇します。また、DFIが高いと、体外受精における受精率、胚発生率、妊娠率が低下し、流産率が上昇するとの報告があります。
また、直接精子のDNAのダメージの調べるわけではなく、精子のDNAダメージを増やす酸化ストレスの程度を測定する酸化還元電位(Oxidation Reduction Potential : ORP)の検査も近年注目されています。このORPの値が高い場合は、DFIが上昇することが知られています。
このことより、DFIIやORPの値が高い場合には、活性酸素を中和する抗酸化作用を持ったサプリメントを摂取したり、精索静脈瘤がある場合には、手術をすることで値が低下することが知られています。
一般精液検査を行えば良いのでは?
⼀般精液検査は、男性不妊の治療⽅針を検討する上で重要ですが精⼦機能を充分に反映できていない可能性が指摘されています。
例えば、通常の精液検査で異常がない⽅でも、精⼦がDNAの損傷を受けている割合が⾼い患者さんでは、受精率や妊娠率が低くなったり、流産率が⾼くなったりすることが報告されています。
そこで、DNA断⽚化指数検査(DFI検査)や精液中酸化還元電位測定(ORP検査)を行っていくのです。
DNA断⽚化指数検査(DFI検査)
どの程度の割合で精⼦のDNAが損傷しているのかを測定します。
※DNA 断⽚化指数(DFI)とは損傷したDNAを持つ精⼦の割合のこと。
精液中酸化還元電位測定(ORP検査)
精液の酸化還元電位(酸化ストレス度)を測定します。
※ORPとは酸化還元電位のことで、精液の酸化ストレスの指標になると考えられています。
本検査を⾏う意義
男性側の隠れたリスク因⼦を特定できる可能性があります。DNA損傷の改善を⽬的とした「⽣活習慣改善の必要性」や「抗酸化サプリメントの服⽤」、「精索静脈瘤⼿術の必要性」、また、「ARTへステップアップのための判断」等、今後の治療⽅針を⽴てるための⽬安となり得ます。
検査までの時間 | 値段 | |
---|---|---|
一般精液検査 | ー | 5,500円 |
DFI検査 | 2週間 | 15,000円 |
ORP検査 | 2週間 | 5,000円 |
検査をお勧めする方
- 精液検査の所見が悪かったが、その原因がわからない男性の方
- 精液所見は良いが、なかなか妊娠できないカップル
- 体外受精における受精率が低く、胚の発育も良くないことで悩んでいるカップル
- 過去に何度も流産を経験しているカップル
- 40歳以上の男性の方(なお、加齢とともにDFIの値が高まる傾向にありますが、若い男性であってもDFIの値が高い方もいます)
- 精索静脈瘤を患っていたり、過去に手術経験がある男性の方
検査方法について
精子を採取する前には2〜7日(48〜168時間)の禁欲期間の後、精液をお渡しした容器の中に採取してご提出をお願いします。なお、採取場所はご⾃宅でも当院でもどちらでも構いませんが、コンドームの使用はお控えください。また、より正確な結果を出すために、自宅で採取する場合には、常温で構いませんので、2時間以内にご持参いただくことをお勧めします。
※精液検査をした後の精液の残りが0.3 ml未満しかない場合は、検査を実施することができませんのでご了承ください。
※精子濃度が100万/ml未満の状態ですと、正確な検査結果を出すことは困難ですのでお検査を行うことはお勧めできません。検査自体はできますが、結果はあくまで参考値となることをご了承ください。