染色体とは
染色体とは、ヒトの体を構成・維持するために不可欠な遺伝子情報を持つ構造物で、DNAやヒストンという蛋白質でできています。なお、ヒトの染色体は44本の常染色体と2本の性染色体の合計46本の染色体で構成されています。性染色体は、性別の決定に重要な役割を果たすもので、X染色体とY染色体の2種類が存在します。男性はX染色体とY染色体を1本ずつ、女性はX染色体を2本持っており、男性は46XY、女性は46XXという染色体で表記されることとなります。染色体の異常については、採血によって簡単に実施できる染色体検査にて調べることとなります。
どうして検査を
行うのですか?
染色体検査によって、染色体の数の異常(異数体)、染色体の形の異常(欠失、転座、相互転座)を発見し、男性の不妊症治療に役立てることができます。なお、精子濃度500万/ml以下である高度乏精子症の方や無精子症の方については、3~13%の確率で染色体の異常が見られると言われているため、該当する方は一度染色体検査でご自身の状態を把握されることをお勧めします。
無精子症における染色体検査の意味
無精子症の場合、染色体検査を行うことで無精子症の原因が染色体の異常によるものであるか調べることができます。また、無精子症と診断されていても精子が回収できた場合、顕微授精をすることで生まれてくる子どもへの影響を考えることにもつながります。
無精子症における
染色体検査の費用
自費診療 | 30,000万円(税別) |
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保険診療 | 約9,000円 |
よくある質問
検査はどのように行いますか?
血液中のリンパ球の核の中にある染色体を調べるために採血を行います。G- 分染法と呼ばれる染色方法で染色し、光学顕微鏡で詳しく観察するやり方が一般的でして、染色体の数の異常や構造的な異常がないかを確認します。
無精子症の方に多く認める数の異常はX染色体が1つ多い、クラインフェルター症候群という異常です。これは出生した男児の500-1000人に一人の割合で存在し、最も多い染色体異常として知られています。
異常があった場合に治すことはできますか?
現代の医療技術では、染色体や遺伝子の異常を治療することはできません。治療こそできませんが、無精子症や乏精子症の患者様が発症原因を知ったり、将来生まれるお子さんにどんな影響がありそうかを事前に把握しておくという意味で、染色体検査を実施しておくことは大切です。
遺伝子の異常を見つけることはできますか?
染色体検査と同じように血液中のリンパ球の遺伝子を検査することで、遺伝子の異常を調べることができます。ただし、現在男性不妊に関係する遺伝子で、臨床的に調べる意味のあるものとして検査できるのはY染色体上に存在するAZFと呼ばれる遺伝子です。この遺伝子は精子を作るために必要な遺伝子として知られており、この遺伝子がないと精子をうまく作ることができません。特にAZFaとAZFbと呼ばれる部分が無いと全く精子を作ることができないため、自分の遺伝子を持った子を残すことができません。
染色体異常であっても子供を授かることはできますか?
生殖補助医療技術(Assisted reproduction technology: ART)の進歩、特に精巣内精子回収術(Testicular sperm extraction: TESE)や顕微授精(Intracytoplasmic sperm injection: ICSI)の技術が発達したことによって、一部を除いて染色体異常の方でも子供を授かることが可能となってきております。しかし、染色体異常が子供に受け継がれてしまうリスクなどもあるため、子供を授かる可能性があると言っても慎重に判断をされることを推奨します。染色体検査を受ける際に、異常があった場合にどうするかも含めて、当院には不妊症を専門とする医師・看護師が在籍しておりますので、ご相談ください。