顕微鏡下精巣精子採取術(micro-TESE)とは
顕微鏡下精巣精子採取術(micro-TESE)とは、非閉塞性無精子症(精巣で精子を作り出す能力が低下して、精液の中に精子が確認できない状態)の方の精巣から精子を採取する手術のことを言います。無精子症の方であっても精巣のごく一部の部分で精子を作り続けていることがあるため、その部分を見つけ出し精子を採取するためにこの手術法は用いられます。手術の流れとしては、医療用の顕微鏡を使うことによって、20~30倍の大きさに精巣の組織を拡大して精巣内を隅々まで観察します。精子を作る能力が残っていそうな部分を見つけ出して、その中から精子を採取していきます。採取に成功することができれば、顕微授精によって妊娠できる可能性が生まれてきます。
精巣内精子採取術(TESE)と顕微鏡下精巣内精子回収法(micro-TESE)
精子が採取できたら・・・
手術によって精巣から採取された精子は、すぐに凍結処理を施して保存します。当院で凍結管理することもできますし、奥様が治療する施設へ搬送することも可能です
当院では、同施設内の「おおのたウィメンズクリニック埼玉大宮」と連携しているため、その後の顕微授精もスムーズに行うことができます。また、その他のクリニックであっても奥様が治療するクリニックに搬送することも可能です。
手術について
局所麻酔を行い、陰嚢を1cm程切開し精巣を体表付近まで引き出します。そして、医療用の顕微鏡を準備し、精子が存在していそうな組織を20~30倍の拡大視野によって見つけ出し、見つかった組織(精細管)を切除して胚培養士に渡します。組織の中にはわずかな精子しか存在しないことが多いですが、当院では、経験豊富な胚培養師が熟練の技術を用いて注意深く精子を探し出します。手術の所要時間は、探索にとても時間がかかる方で2時間程度となっておりますが、痛みのないように手術を行います。術後の縫合で使用する糸は身体の中でとける素材ですので、抜糸は不要です。
合併症
麻酔によって手術中に痛みを感じることはほぼありませんが、麻酔が切れた後はしばらくの間鈍い痛みが続くことがあります。
皮膚を切開して行う手術ですので、出血や傷口に感染するリスクなどがありますが、十分な止血を行い、抗菌薬を投与することでリスクを減らしています。
手術後に精巣が小さくなったり、男性ホルモンが低下することがあります。手術後に精巣の超音波を行たり、手術前の男性ホルモン値と比較します。男性ホルモンの低下が強い場合には、必要に応じてテストステロンの補充を行います。
局所麻酔や抗菌薬にアレルギーがある方は術前の問診にて必ずお知らせください。
手術の準備
入浴して陰嚢を清潔な状態に保ってください。また、手術前日の食事については、特に制限はありません。手術当日は朝8時までに食事を済ませてください。
顕微鏡下精巣内精子回収法のよくある質問
精子採取後はいつ頃から仕事に復帰できますか?
精巣の痛みがありますので、2−3日は自宅で安静にされることをお勧めします。
精巣内精子採取術のよくある質問
手術を受けたことがないので不安です。
初めての手術というだけでなく、精子が回収できるかどうか不安だと思います。 経験豊富なスタッフが、できるだけリラックスして手術を受けていただけるようにしています。
本当に手術をする必要がありますか?
射出精液中に精子が見つからない場合には、手術により精巣内より精子を採取する意外に、自分の遺伝子を持った子を授かることはできません。
精子が回収できなかった場合どうなりますか?
手術の際に病理検査を行い、その結果にもよりますが、精子が回収できない場合、①夫婦二人で過ごす、②第三者の精子を用いた人工授精(AID)をおこなう、③特別養子縁組を行うの3つが選択肢となります。
手術は痛いですか?
手術中は痛みが無いよう局所麻酔を使用します。痛みがあれば痛くはいようにして手術を行います。術後は痛み止めをお渡ししますので、痛み止めを使用して痛みのコントロールを行なっていただきます。
手術後は仕事を数日間休まないといけないですか?
手術翌日に傷のチェックを行うため、来院していただきます。また、手術の痛みもあるため、最低でも2−3日は自宅で安静にしていただくことをお勧めします。
手術はどのように行いますか?
仰向けに寝ていただき、精巣を取り出し切開、顕微鏡で精細管を観察し、精子をつくっている精細管を採取します。