精子無力症
精子の運動率が悪いこと、具体的にはWHOの基準で精子運動率が42%以下のことを言います。約74日かけて精巣内で作られた精子は精巣上体へ運ばれ、受精能を獲得し、精嚢、前立腺でつくられた精液と一緒に射出されます。精子無力症の原因は精液の液状化の異常や細菌感染、遺伝子異常やプロテオミクスの変化など分子レベルでの問題などまだはっきりとわかっていないことも沢山あり、同じように運動率が低いという結果であったとしても、原因は人それぞれ異なります。
精子の運動
精子は鞭毛と呼ばれる細長い尻尾を動かすことにより運動します。鞭毛はミトコンドリアで産生されたATPがエネルギーとなり、鞭毛の中にある微小管を動かすことで運動します。精液の中には亜鉛イオンやプロラクチンなどのホルモン、SPMIと呼ばれるタンパク質など精子の運動に関係する様々な物質が含まれていることが知られ、精子の運動を複雑にコントロールしています。
運動率が悪い原因は?
精子の運動には多くのことが関係しているので、一元的に原因を特定することはできませんが、大きな原因の一つに活性酸素種(ROS)の影響があります。ライフスタイルや精索静脈瘤、停留精巣や細菌感染などはROSの上昇を介して、精子にダメージを与え、運動率を低下させることが知られています。また、禁欲期間が長すぎると、作られてから長時間経過した精子も一緒に射出されるため、運動率が低下することが知られています。
診断
精子の運動率の検査は一般精液検査によって行われます。精液検査では、精子全体の中でどれくらいの精子が運動しているのか、その割合を評価します。WHOで定められた運動率の基準値は42%ですので、これより低い値だと精子無力症ということになります。ただし、このWHOの基準値は1年以内に自然妊娠した人の精液検査で下位5%の値です。1年以内に自然妊娠している人の運動率の中央値が64%であることを考えると、42%を超えていれば絶対大丈夫というわけでもなさそうです。また、精子の数が極端に少ない場合の運動率は見ている場所により大きく変わってしまいますので、あまりあてにできません。
運動率が低いと
精子運動率が低いと自然妊娠が困難になるだけでなく、人工授精や体外受精における成績も悪化します。また、精子の運動率が悪いということは、活性酸素の影響により、子供の体を作るための設計図(精子のDNA)も影響を受けている可能性があります。精子の運動率が悪い場合は、精子を作っている場所である男性の体のチェックを行い、少しでも精子の状態を改善することが妊娠率を上昇させることにつながります。
当院では
当院ではWEB問診による病歴や生活習慣のチェック、精巣超音波による精巣のチェック、採血により精子を作るためのホルモンのチェックを行うことで精子の状態を改善するための方法、妊娠率を上昇させるためのご提案いたします。